漫画のちゃんとした描き方を知らなかった頃、僕は漫画の参考書みたいな漫画を買って、その中に描かれている漫画を描く道具を揃えようと思った。
小さな文房具屋にはそれは無かった。
大きなお店に行けば、漫画を描く道具があった。
しかしその大きなお店は家から遠く、いつでも行ける所でもなかった。
でも、たまに行ってその漫画を描く道具を眺めるだけで何だかワクワクした。
そして少しずつ、漫画を描く道具を揃えていった。
Gペン、丸ペン、インク、漫画専用原稿用紙。
買える時にそれらを買って、練習で絵を描いたりした。
練習なんかもした。
寝転がってインクを眺めていたら、何を思ったのか蓋を開けてインクをぶちまけた事もある。
スクリーントーンを入手した時は、漫画家になれたかのような気分になった。
漫画でよく見る色の付いた部分はこのスクリーントーンで表現されていたのか……と、知らないを知るのが面白かった。
そして、賞に応募するために原稿用紙に漫画を描き始めた。
まぁそれらは全部落選だったわけだが……
あれから長い年月が過ぎて、今も漫画を描いている。
今はデジタルに移動して、あの頃に揃えた道具を使う事はなくなったが……
それでもあの頃の気持ちは忘れていない。
デジタルはデジタルなりに道具を揃えて漫画を描く。
その道具を入手すると、やっぱりワクワクする。
最近、クリスタで使える片手デバイスを買った。
右手でペンを持ち、左手でボタンを操作してツールを切り替えたりするのだ。
すごく便利で、それを使える自分にテンションが上がる。
さて……
次はどんな道具を揃えようか?
これは何をするにしても……な気がする。
スポーツでも芸術でもそうだが、まずはそれを始めるための道具を揃える。
そこから全てが始まる気がする。