子供の頃、僕はギャグ漫画ばかり描いていた。
漫画と言っても、ノートに鉛筆で描いただけのもだが……
そして小学生の頃、仲の良い友達も漫画を描いていたりして、お互いに漫画を見せ合っていた。
自分で雑誌のような本を作り、色んな漫画をそこに描いていた。
しかしその友達は中学が別となり疎遠な関係となっていった。
中学生になり、その友達とお別れしてからも僕は漫画を描き続けた。
でも、今度は見せる相手がおらず一人でもくもくと描き、誰にも見せる事無くノートを積み上げていくだけだった。
時には連絡帳に四コマ漫画を描いたりして、一人で漫画を描くというのを楽しんでいた。
するとある日、中学二年生の時だ。
前の席の生徒が僕の連絡帳に描かれた四コマ漫画を見つけたのだ。
僕は恥ずかしくて、連絡帳を隠そうとした。
しかしその子は連絡帳を奪い、半分無理やり僕の四コマ漫画を見た。
は……恥ずかしい……!
自分の描いた漫画が見られるのが恥ずかしい……!
そう思っていると、その子は僕の四コマ漫画を読み笑ってくれた。
僕の漫画が読者にウケた瞬間である。
この時の感覚は、小学生の頃に漫画を見せた感覚とは違っていた。
小学生の頃はノートに(正確にはノートの一ページを切り離し、折って小さな本のようにしたモノに)漫画を描く子がそれなりに居て、漫画を見せ合う事が一種の遊びであったように思う。
だから漫画を描く事がそれほど珍しい事でもなかった。
しかし学年が上がるにつれて漫画を描く生徒も少なくなり、仲の良い友達と自分の描いた漫画を見せ合って楽しむ程度に落ち着いた。
でも……だ、その友達も漫画を描く事が一番の楽しみではなかったのだ。
僕との遊びの中で、その漫画を描くという遊びをしていたにすぎない。
中学生になり、漫画を描いている人なんてほとんど居なかった。
(中には隠れて描いていた人もいると思うが……。ちなみに絵の上手い人は普通に居た)
だから、漫画を描く事が恥ずかしい事のように思っていたのかもしれない。
そういうことだから、漫画を見られるのも恥ずかしかった。
しかしどうだ。
無理矢理ではあるが漫画を読まれて、ウケて、また見たいと言われて、僕は今まで感じた事のない快感を得たのだ。
もっと読んでほしい!そして、楽しんでほしい!
この時僕は、
自分の作品を人に見せる事の楽しさを覚えたのである。
感想をもらう事の喜びを知ったのである。
そして、漫画家になるという夢が産まれた。
あの時その生徒が僕の漫画を無理矢理読まなければ、漫画家になるという夢が産まれずに今の僕は無かったかもしれない……
何にせよ僕は、恥ずかしさの向こう側を知ってしまったのである。
恥ずかしさの向こう側には、快感があった……!!
……
いや、なんか、露出狂の変態みたいだな……